スノウ・ドロップ・パラドックス

秒針は凍りついて 零度で止まる世界
吐き出した溜息が 白く文字化けする
「寂しくないよ」なんて プログラム通りの嘘
硝子の塔の最上階 君を見下ろしていた

禁忌の扉 叩くのは誰?
熱を持ったその指先が 結界を溶かしてく
心拍数が上昇
このままじゃ 私が私でいられない

永久凍土の 約束破り
春を運ぶ 愚かな旅人
ねえ、近づかないで
その温もりは 私にとっての猛毒だ

舞い落ちろ 雪よ 世界を隠して
狂おしいほど 純白に染め上げろ
君の瞳が 私を捕らえる前に
氷の荊で 視界を塞いでよ

愛なんて バグだ 知らないままで
冷たい夢の中で 踊らせて
溶けて消えるくらいなら いっそ
この身ごと 吹雪になれ

36.5℃の 体温が伝染る
理論値を超えた感情 制御不能
鏡に映る顔は 泣いているの? 笑ってるの?
ノイズ混じりの視界で 君が名を呼んだ

解け始めた 魔法の定義
書き換えられる 存在証明
ああ、抗えない
その優しさが 私の冬を締め付ける

降り積もれ 雪よ 時間を止めて
残酷なほど 綺麗に飾り付け
春の陽が 私の喉元 突き立てる
サヨナラの季節が そこまで来ている

痛みさえ リアル 教えてくれた
君の手を握り返してみたいけど
水に還る運命なら 今は
冷たいままで いさせて

ねえ、覚えている?
古い御伽噺
雪の精霊は 恋を知った瞬間に
ただの水たまりになって 消えるんだって
……それでもいいの?
……それでも、いいよ。

舞い上がれ 雪よ 最期の魔法
君の記憶に 深く焼き付いて
形を失くしても 傍にいるから
涙の雫に 姿を変えても

愛してる なんて 言わないけれど
この温もりだけは 嘘じゃない
朝日が昇る その前に 早く
私を看取って 笑って

白く 白く 薄れていく
君の輪郭 滲んでいく
ありがとう
あたたかい